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令和5年度 学位記授与式 学長式辞


令和5年度 学位記授与式 学長式辞

 駒ヶ根にも春の暖かな日差しが注ぎ、美しい青空に恵まれた本日、長野県看護大学・大学院学位記授与式を挙行いたします。看護学部生 80 人の皆さん、ご卒業おめでとうございます。看護学研究科博士前期課程を修了し、修士(看護学)を取得なさる 8 人の皆さん、博士後期課程を修了し、博士(看護学)を取得なさるおふたりの方、そして論文博士を取得なさった方を含め、11 人の皆さん、学位取得、誠におめでとうございます。本学の教職員を代表して心からお祝いを申し上げます。

 本日ご臨席いただきました、ご家族の皆様、さぞやお喜びのことと存じます。心よりお祝い申し上げます。おめでとうございます。

 本日は、設置者である長野県から関昇一郎副知事、ご来賓には長野県議会議長佐々木祥二様、駒ケ根市長伊藤祐三様、本学運営協議会の皆様、主たる実習施設の病院長様、関係団体の皆様、そして地元住民の皆様にもご臨席いただきました。皆様方には、日頃から本学の教育、研究、運営にご支援、ご協力を賜わっております。この場をお借りして、お礼申し上げます。

 さて、本学の初代学長である見藤隆子先生のご著書に「学問としての看護」という書物がございます。見藤先生は東京大学医学部衛生看護学科の1回生として、看護を学んでいます。当時は、看護学科という名称が認められず、衛生学なら認められましたので、衛生看護学科という名称となったと聞いております。

 ご著書「学問としての看護」の中で、見藤先生は、自分の学生時代は、「科学万能、科学にあらざれば学問でなし、という時代であった」と述べています。その影響から、「自分は看護とは何か、看護学とは何か、を問い続けてきた」と述べています。そしてご自身の看護実践を通して、看護のかかわりによって人は変わっていくという「看護のプロセス」に気づかれました。看護を提供する自分自身を客観視することや、人の立場に立つことについて探求し、アメリカの看護理論家であるジーン・ワトソンが提唱するトランスパーソナルケアリングにたどり着いています。トランスパーソナルケアリングとは、自分と他者との関係について、ケアする人と受ける人が互いに教え、学びあう状態を言います。見藤先生はご自身の実践と看護理論を結び付け、従来の科学とは異なる、新しい看護学の学問体系の構築に貢献なさいました。

 看護学は約 70 年の歳月をかけて、実践の学問として社会に認められるようになりました。人間の健康、暮らし、尊厳を守り支える看護実践という事象を研究し、概念化して看護の理論がつくられています。看護学の教育・実践・研究・社会実装という循環が看護学の学問体系を創り、発展させています。このように看護学は、見藤先生の学生の頃の学問とは異なる、ケアサイエンスという新しい学問として認められるようになったのです。

 看護系大学では、このような体系化された看護学の教育が行われています。看護系大学院では、高度看護実践家や看護学の教育研究者が育成されています。日本学術会議には、健康・生活科学委員会看護学分科会も設置され、看護学の立ち場から社会に発信できるようになりました。

 学部生の皆さんは、本学で、看護師と保健師、助産師という3つ国家試験受験資格が得られる「統合カリキュラム」による看護教育を受けました。どの職種で働くとしても看護実践及び看護学の核となる、看護の本質的な内容を学んでいます。本学の統合カリキュラムは、様々な生を営む人間を深く理解して、人のあらゆるライフステージに対応し、病院や施設、在宅や地域などあらゆる場で、健康増進および疾病予防、病気や障害を有する人々へのケア、死に臨む人々のケアまでをも含む、「看護ジェネラリスト」を育成する教育です。

 卒業後、皆さんは、まずは「看護ジェネラリスト」として、自信をもって、看護実践、保健活動、助産活動に取り組んでください。。皆さんが本学で身に付けた、自己研鑽力、主体的学修力、倫理的判断力、看護実践力、多職種協働や地域の人々との協働力、そして、国際的視点での思考力は、どのような困難にも立ち向かい、ご自身の人生を切り拓く力となるでしょう。

 看護学研究科を修了なさる皆さんは、看護実践から研究課題を見出し、適切な研究方法によって研究の問いを明らかにする、看護研究のプロセスを学びました。今後は、ご自身の研究成果を実践の場に活かし、看護の質向上に貢献していってください。「看護スペシャリスト」や看護管理者として、また、看護学の教育者や研究者として、研鑽を積んでいって下さい。

 そして、卒業生、修了生の皆さんには、本学で学んだ力を基盤として、これからの看護学の可能性を切り拓き、ご自身のキャリアを発展させていってほしいと期待しています。

 これからの社会は、超高齢、人口減少に加え、ウイズコロナ・アフターコロナが加わり、私たちの暮らしは大きく変わっていきます。総合的に人をとらえ、人の健康、暮らしと尊厳を守る看護学には、関連する学術分野と連携し、ケアイノベーションを起こすことが期待されています。ケアイノベーションは、新しいケアの技術や考えを取り入れて新たな価値を生み出し、社会に大きな変化を起こすことです。例えば物づくりの産業界と連携して、安全で安心な在宅支援システムを開発したり、健康的な街づくりのコミュニティ活動にも参画することができます。訪問看護師テーションや助産院に加え、看護職による起業なども活発になることでしょう。特定行為が出来る看護職やナースプラクティショナーも増えていくでしょう。皆さんが、大学や大学院で学んだことは、皆さん自身のキャリア形成の基盤となりますし、これからの看護の可能性を拡大していく力にもなります。今後、皆さんは、長野県内外で就職し、活躍されます。長野県看護大学は、今後も、常に皆さんに寄り添い、支援をしていきます。いつでも皆さんを歓迎し、力になります。

 最後になりますが、本日、私たちは、穏やかにこの日を迎えることができました。しかし、世界では、ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルでの戦争など戦火が絶えません。1月の能登半島地震では、多くの方がお亡くなりになりました。お悔やみを申し上げるとともに、今なお避難生活に苦しんでいる方々の1日も早い回復と、地域の復興を願っております。

 私たちはこの平穏な日々に感謝しつつ、人々の生病老死に寄り添う看護という職業人として、苦しむ方々への支援をしていきたいと思います。

本日の善き日に当たり、改めてお祝いを申し上げ、式辞といたします。

本日はおめでとうございます。
  
                                                  令和 6 年 3 月 2 日

                                                  長野県看護大学 学長 
                                                      大塚眞理子
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